走り続けること以外に、ランナーに居場所などない…洞爺湖完走記【後編】

さて25キロ通過は1時間43分11秒（21分11秒）。ややペースが落ち、併走していたそうらんさんと、
「貯金ができない、ぎりぎりのとこまで落ちましたね」などと話しながら、励まし合います。
27キロを過ぎると、湖畔から離れ水田の中の直線道路を行きます。気持ちがだれるところ。

集団で押し出されるようにトップに出ましたが、ここで違和感を感じていた左足が吊り始めました。
ペースに付いていくのが、いっぱいいっぱい。でも決定的な痛みがあったわけではありません。

でも、自分でも意外にすんなりと、「30キロでやめよう」と心が折れてしまいました。
いま思えば、何でもいいからやめる理由がほしかっただけなのかもしれません。

再び湖畔に出たところで、後方から阿部雅司さんに「むうさん、久しぶりです」と話しかけられました。
リレハンメル五輪、複合団体の金メダリスト。3年前に札幌の居酒屋でお会いしてからの友人です。
「阿部さん、先行って下さい」。走りがいかにも軽い阿部さんに、集団のトップをお譲りしました。

（写真はゴール後、チームからふるのメンバーと。ぷーコちゃん提供）

そして「洞爺水の駅」がある30キロ地点に向けて、最後だと思ってペースを上げました。
後方からそうらんさんに「その走りなら、最後まで行けるでしょう」と話しかけられましたが、
30キロで足をぴたりと止めてしまいました。先に気持ちの方が折れていたからでしょうね。

レースを途中でやめるというのは惨めなものです。エイドのすみっこで声援を送り始めましたが、
後方から次々に友人達がやってきても、「こんなとこで何やってんだ」などと叱られるだけ。
レースに背を向けて、収容バスの中で待っていようかな、とも思いましたが、それも惨めです。

15分ほど声援を送ったら、ぼくのマラソンの師匠、「チームからふる」の日景師匠がやってきました。
師匠は無表情でしたが、「これではいかん」と本能的に走り続けていました。
32キロで前夜泊まった宿のご主人と奥さんが横断幕を作って応援してくれています。

まったく、恥ずかしい。でも、いまさら自分を責めても仕方がありません。

ぼくが歩くたび、日景師匠は「むうさん、行くぞ!!」と叱咤してくれましたが、やがて師匠からも遅れ、
友人達に次々と抜かれました。途中からは恥ずかしくて、チームのユニホームを脱いで歩きました。

そして36キロでやってきたライバルのとよさんが、かなり強い口調で「おい!! むうさん、行くぞ」と。
結局は青島太平洋や佐倉で戦ったライバルの叱咤がきいて、とよさんと一緒にゴールできました。

走り続けて、戦いの舞台にいることしか、ランナーにとっての居場所はありませんよね。
そんなことを、いまさらですが、改めて認識しました。こんなこと、分かっていたはずなのに。

僕がゴールした後、自己ベストの2時間55分というタイムでゴールした、そうらんさんと握手しました。

（写真はあさ-coさん提供）
「30キロまでむうさんに引っ張ってもらったお陰ですよ」と言ってもらえたのが救いでしたが、
そうらんさん、決して僕の力などではありません。でも、ありがとう。いい目標ができました。

あすの番外編では、3時間46分台でゴールした妻のレースを振り返ることにします。
3年ぶりの3時間50分切り。想定よりも10分も速かった。こっちの方が、何倍も中身がありそうだなあ。

コメント 14

姫は、すごいなあ～～
明日も楽しみにしてますっ
by fumilin (2009-05-26 23:39) 

奥さんのタイムもすごいな～
番外編、楽しみです。
by すが太郎 (2009-05-27 01:01) 

　むうさん、どうもです (^_^)/

　確かに、知り合いが多いと、簡単に途中棄権などできないかもしれませんね（苦笑）
　ランナー仲間からも、応援のギャラリーからも、「むうさん」と呼びかけられたら、自分でも思ってもいなかった力が湧いて出てくるのかも・・・ ヽ(^o^)尸

　それがいい事なのかどうかは別の事ですが・・・ (^^;

　日の丸や、母校などの期待を背負って走るランナーというのは、終始そういう目で見られているのでしょうね。
by 夢見るピーターパン (2009-05-27 11:12) 

遅くなりましたが、洞爺湖、お疲れ様でした。
前半から一度も背中を見ることなく、３０キロ地点、逆走してくる
むうさんを見てビックリだよ。

うちのチームの頑張り屋君もそうでしたが、果敢に攻めるレース
はマラソンの醍醐味ですね!

そして、そうらんさんの(2;55)自己ベスト更新も素晴らしいですね。
by 福ちゃん (2009-05-27 17:51) 

洞爺湖マラソンお疲れ様です！
むうさんとあそこでお会いして、正直驚きました。
思わず「むうさん！！」と叫んでしまいましたが、あの時は私もボロボロでした(^^ゞ　初めて会った私のことを苗字で呼んで下さったのでビックリしました^^;
フルマラソンは奥が深いですね・・・・
by そよ風 (2009-05-27 23:49) 

むうさん
洞爺湖マラソンお疲れ様でした。
ブログを拝見すると大変なレースだったようですね・・・。
でもゴールした事にすごく意味があると思いますので気持ちを切り替えて次のサロマ一緒に頑張りましょう！
それと奥さんの頑張りも期待していますよ！
サロマでお会い出来るの楽しみにしています。


by 阿部　雅司 (2009-05-28 08:16) 

ふみりんさん、ありがとうです。姫、やるなあ。
不思議な力を持っているようです。
by むうさん (2009-05-28 14:59) 

すが太郎さん、気持ちがぼくよりもマラソンに向いています。
最後に力を絞り出せるとこなど、ぼくも見習いたい。
by むうさん (2009-05-28 15:00) 

ゆめさん、それほどありがたく尊い声援なのに、それでも身体が動かなくなる。これは完全にそれまでのペース配分など、コントロールミスなんですよね。みっともないことです。
by むうさん (2009-05-28 15:03) 

福ちゃん、あのときは収容バスに乗せてもらおうとして、逆走していました。いま思えば、愚かなことです。混乱していました。
by むうさん (2009-05-28 15:05) 

そよ風さん、お会いしたのは昨年の道マラに次いで２回目でした。
もっともその時は35キロ過ぎで、そよ風さんに付いていけずに遅れ始めた時でしたが。いつもこんなのだなあ。
by むうさん (2009-05-28 15:07) 

阿部雅司さん、久しぶりのマラソンをやっぱりサブスリーで飾るなんてさすがだなあ。後ろから追いつかれたときに、気持ち的な余裕をすごく感じて、やっぱり圧倒されました。あそこで付いていけるランナーになりたいな、と思いました。サロマもよろしくお願いします。
by むうさん (2009-05-28 15:13) 

洞爺湖マラソン、お疲れ様でした！むうさんに会えてホントにうれしかったです。
そうらんさんとの握手の写真もとっても素敵ですね～。

でもむうさんには辛いレースだったんですね。
何と言っていいか分かりませんが・・・
また力をいっぱい溜めて行きましょう！！サロマです！！
by あさ-co (2009-05-31 21:44) 

あさ-coさん。勝手に写真使わせて頂いてすいません。
途中で折れたわりには、さわやかですよね。
きちんと反省して、練習して、次は11月のフルのレースです。
by むうさん (2009-06-02 17:48)